9/25/2012

TAKE IT EASY.

 Trestles

 " TAKE IT EASY ! "
 肩の力が抜けて、前向きな気持ちになれるいい言葉だなあと思う。ここのところこの言葉を自分自身に言い聞かせて旅の日々を過ごしている。「気楽にいこうぜ!」と訳したらいいだろうか、きっと多くの日本人も知っているフレーズだ。アメリカへ来て最初にその言葉を意識しはじめたのは、二日目にVenice Beachのスケートパークへ行った時だった。たくさんの大人に混じって、ひとり小学校低学年くらいの小さなスケーターがいた。彼は周りの大人たちに退きを取らない滑りを見せていて、むしろ怖いものが無いといった感じで誰よりも果敢に滑り続けていた。失敗をすると半ばムキになって挑み続ける彼に、ひとりの大人が言った言葉が"Take it easy!"だった。自分が眺めていた、聞いていたそのワンシーンがなぜかはっきりと記憶に残っている。旅がはじまって二日目で、周りのすべてが新鮮で落ち着かない気分の自分にも、「気楽にいこうぜ!」という言葉が心地よく響いたのだろうな、と今思う。
 そのベニスビーチへ昨日からまた来ている。安宿に泊まって数日間この町で過ごしてみたいと思った。昨日の夕方、ビーチの方は日曜日ということもあって騒がしいくらいにたくさんの人がいて、ビーチ沿いの通りにはパフォーマーや物売りもいた。その通りを歩いて行くと向こうの方から太鼓の音が聞こえてきたので、ビーチを海のへ向かって歩いて行くとドラムサークルができていた。20人ほどの太鼓を叩く人たちに混じって多くの人が踊ってみんながハイになっていた。ちょうど日の入り時で、夕日と海と遠くの山を背景にしたその人集りがきれいでしばらく眺める。日が落ちてからも続けられ、盛り上がりが最高潮に達しようかというところで、パトカー三台が制止しに来て終わった。日曜日の夜、みんなそれぞれの生活へ戻って行く時間だ。僕もすこしぶらぶらして宿に戻った。
 すこし遡ると、四日前におばさんの家を出てレンタカーで動きはじめた。今回は(前回高校生のときに来たときには終始お世話になりっぱなしだった)すこし顔を出す程度のつもりでいたが、やっぱり色々と気を利かせてくれて居心地が良かったので、結局一週間以上も泊まっていた。いとこのモニカも大学受験を前にして親子で忙しい時期だったろうけど、海外での旅をこんなにきもちよくスタートできるなんて、本当に感謝だ。そんな環境から急にポンと外へ出て、慣れない土地での慣れない運転がはじまったのですこし、いや結構気が疲れてしまったロードトリップ一日目。このレンタカーは約一か月後にサンフランシスコで返却できるように借りているので、それまでモーテルやホステル、キャンプ場などで寝泊まりしながら行きたい町をまわって行く予定だ。まずは南の方へも少し行ってみようと、一日目に"Trestles"と呼ばれるサーフスポット、San Onofre State Beachへ行った。Hermosa Beachで出発前に寄ったサーフショップET SURFのお兄さんと、PIER SURFのTorch(その後名前を聞いた)の二人ともがまずお勧めしてくれたのがTreslesだったのだ。ちょうどサーフブランドHurleyの大会がやってて世界のプロが集まってるとのことだった。到着したのはもう夕方で大会は終わっているようだった。けど本当に美しいビーチで、ここでも日が落ちるまでぶらぶら歩いたりサーファーを眺めていた。暗くなってからの慣れないフリーウェイは怖い。ガソリンも無くなりそうになったところで寄ったガソリンスタンドのおじさんに安いモーテルを教えてもらい、やっとしっかり息が吸えた感じ。これからはなるべく夜は運転せずに済むように動いて行こうと思う。それからの数日はTrestlesとRedondo Beachの間あたりに位置するHuntington Beachに居た。サーフィンもするが、基本的にはただぶらぶらする日々がつづく。そうなるとやはり色々考えてしまうが、まさにそんなときに効くクスリが"Take it easy!"だ。まだ出会いという出会いが無く、旅としては物足りなさを感じてしまうが、自分がずっと興味のあった土地を好きなように旅しているこの時間自体がきっと自分には意味があるのだと信じて、take it easy、気楽に旅を続けようと思う。
 今朝は同じ部屋のみんなより早く目が覚め、果物を食べ、散歩がてらコーヒーショップへ行った。店内で少し飲んでから宿へ向かってまた歩き始める。紙コップを持ってカメラだけをぶら下げて歩いているとこの町に住んでいるような気分になってきて、久しぶりに胸を張って歩けた。

2012.9.24Mon Before noon wrote.