11/06/2012

still walking around.


 無印の、ポケットのついた一冊のノートを手帳として使い始めて三年が経つ。ポケットの破れた部分は糸で繕い、ジップで閉まらなくなった部分はマジックテープを貼るなどしながら使いつづけている。まだ手の着けられていないページをざっと見た感じでは、あと半年ほど使えそうだ。ただの白いページのノートなので、見開きに自分で枠を描いてカレンダーにし、そこにちょこちょこと予定を書き込む。ずっとその枠を描く作業だけは、なんとなく色鉛筆で月ごとに色を変えることを続けてきたが、最近はただの黒いボールペンで描いている。その他のページには日々のメモや、出会った人から書いてもらった連絡先(これが一番好きなページ)など、三年分を見返してみるとそれなりに充実した内容の一冊だなあと、カメラと同じくらい大切なモノだ。
 二年前の今日11/5のマスには「ブラジル朝イチ~4」とある。当時働いていた名古屋の金山ブラジルコーヒーのシフトだ。翌日6日土曜日には「最終仕上げ、出発」とあるが、準備が間に合わなかったのだろう、出発がバツで取り消されていて、さらにその翌日7日日曜日に改めて「出発、18:30~搬入!!」と書かれている。TAMBOURIN GALLERY(tokyo)での、自分の初めての個展のことだ。数日前に、そうか二年前の今頃はちょうどタンバリンで展示していた頃だな、と思い出していたが、改めて手帳を見返したらまだ来週のことだった。去年春日井のCAWAでの展示はちょうど11/2に終わったところだ。秋生まれの自分にとって、秋は何かイベントを行いたくなる季節なのだろうか。実際にタンバリンでの展示の日にちを決めるときは、ひとつ歳をとる前に済ませたいと思って誕生日が来る直前を選んだのだった。ちなみにその時の11月の色は青。秋らしくないが、これは僕の一番好きな色だ。そのときどう思って青を選んだのかは覚えていないが。
 "Walking around, Standing by"というのがその展示のタイトルだった。歩き回って、傍観する。今もそれは変わらない、むしろもっと歩き回っているくらいだ。スナップで撮影を続ける写真家には当たり前すぎるタイトルだが、「傍観」という言葉がストンと腑に落ち、さらに英語を使いたかった自分にはこれ以上のアイデアは出なかった。今ひとりで歩き回る日々の中で撮っている写真は、まさにそのつづきの様なものだと思う。日本に帰って現像、プリントしていくのが楽しみで仕方がない。変わっていないと思っているスタイルの中で、目に見えるカタチで何か変わっているものを発見できたらそれもうれしい。
 今年の正月に神奈川へ引っ越してから8月まで、今までにないくらいきっちり週6日の仕事をしていたから、1,2月のカレンダーにはほとんど何の書き込みも無く、3月からはそのカレンダーのページすら作っていなかった。そして9月からまた再始動したカレンダーは黒いボールペンしか使われていない色気の無いものだが、その空欄にも何か意味を感じられるような、そんな旅の日々をあと一か月。風邪をひいてここのところ滞在先の友人宅に引きこもりがちだったが、昨日からやけに暑いくらいの天気で、Tシャツで過ごせる、また日に焼けるような日差しだ。