Topanga Night and Morning


 アメリカ旅行へ出る前に、トパンガキャニオンという、おもしろそうな人がすこし集まって来てそれぞれ小屋で暮らしている場所を知った。その中のひと際小さな小屋で暮らすのは、日本人の写真家、武藤アヤさん。いきなりの知らない男からの連絡にも関わらず、快く「是非遊びに来てください」という返事をいただいたときの静かな興奮を憶えている。たしか金曜の夜だったはずだ。簡単な夕飯は用意してもらえることになり、すこしだけ緊張しつつトパンガへ向かっていく夕方、「ビールだけ持って来て~」というメッセージが届いて一気に気持ちも緩み、いい夜を過ごせると思った。海岸通りからしばらく山道を上って行きiPhoneの地図が指す場所の近くへ着くと、言われていた通り真っ暗だった。道端に車を停めて電話をかけても出なかったので、しばらくウロウロしていると一台の車が近くに停まった。ただ真っ暗なので顔も見えず、アヤさんのことを知ってますか?と声をかけると、日本人の女性だった。思いがけず出会ったナツコさんもアヤさんのところに遊びに来たということで、後を付いて、ヘッドライトで足下を照らしながら歩いて行った。雑誌で見ていた小屋を目の前にして興奮しはじめていた僕を更に興奮させたのは、Kyle Fieldが居たことだった。このLittle Wingsという名前で活動しているミュージシャンのカイルを知ったのはそのわずか数日前のことで、YouTubeで観てすぐに好きになっていたのだった。アヤさんのパートナーだということは聞いていたが、その夜そこに居るとは思っていなかった。カイルがギターを弾くのを眺めたり、女性陣が夕飯の支度をしてくれているのをたまに覗きに行ったりしていると、すこしずつ彼らの友人が集まって来た。自然と焚き火がはじまり、その周りを囲んでそれぞれビールとホットドッグを手にしていた。気付くともう週末のホームパーティーという感じになっていて、けど僕はうまく会話にも入っていけず、淡々とビールを飲んでいたような気がする。その感じは日本での普段の暮らしでもそう変わらないので、そんな場所にいて右から左から聞こえてくる英語に耳を傾けているだけで自分としては楽しかった。そこにはサンフランシスコとLAのベニスビーチでGENERAL STOREを営む、画家のSerenaとその夫のMasonもいた。彼らはそのすぐ横の空き地に自分たちで小屋を建てているところだった。それからすこしすると仕事帰りのMikeが現れた。マイクもすぐ近くの小屋に住んでいるトパンガの住人だ。彼とは仲良くなれそうだなあ、なりたいなあと思わせるような、すごく気持ちのいい笑顔で挨拶しに来てくれた。オクラホマ出身のマイクはかつて自分のコーヒーショップも営んでいたことがあり、その後ポートランドで少し暮らした後にトパンガへ来て、今は少し車で走った先のマリブのコーヒーショップで働いている。フォルクスワーゲンの古いVanagonに乗っていることも僕を惹き付けた。
 夜が更けていくにつれ友人たちはそれぞれ帰って行き、トパンガの住人とお泊まり組だけが残った。その夜はテントをその辺に張って寝ようと思っていたが、結局マイクの小屋のソファで寝た。無意識のうちに飲み過ぎていたのか、朝目覚めると若干の二日酔いを感じた。それでもすぐに気分が良くなってくるくらいの、本当にきれいな朝だった。窓ガラスから差し込んでくる朝日で暑くなってきて、テラスへ出るともう、言うこと無しのBeautiful Morningだった。辺りを少しぶらぶらしていると、さっき自分がいたテラスでマイクが大きく伸びをして深呼吸しているのが見えた。コーヒーとエッグクロワッサンの美味しい朝食をピクニックテーブルでいただく。ゆっくり朝の時間を過ごしてから皆で海へ行った。

Topanga Canyon, CA Oct. 2012 


Kyle Field playing the guitar by the cabin.
Mike took deep breathes in the sunshine.
Kyle and Mike getting ready to go surfin'.