1/02/2014

MAYBE AMERICANS+ Special Night



It's 6 o'clock in the morning. There is a ripple in my heart and it never fade away.
今は朝の6時。心の中にさざ波が打ち寄せて、それは決して消えない。


 ちょうど1か月前の12月1日は、現在横浜トルバドールで展示中の、MAYBE AMERICANS+(1週間遅れの)オープニングパーティーだった。僕にとっては夢のようなことが実現した夜でもあった。僕がGOMES THE HITMANを聴き始めた高校生の頃、最初に買ったのは『Ripple』というアルバムだった。そのアルバムは先のアメリカ旅行中、特にレンタカーで渇いた土地を走っている時に聴きたくなって、iPhoneから流して聴いていたものだ。ジャケットや歌詞カード内の写真もそんなアメリカの土地で撮影されたものだから、そのイメージが強く残っていたからかもしれない。そしてそんなふうに付き合い続けてきたアルバムの中に収録されている『ドライブ』という曲に、僕の朗読も織り交ぜて演ってみよう、という話になったのだ。山田さんからそんな提案を受けたとき、うれしい興奮と同時に、正直言って不安もあった。自分一人での朗読もまだまだ危なっかしいのに、ミュージシャンと一緒に合わせるだなんて。けれど、軽くリハーサルを、と本番の2日前に山田さんの自宅へお邪魔した夜、不安はスッキリ無くなって、ワクワクする気持ちにすっかり変わってしまった。お菓子を食べてコーヒーを飲んでいると、もう何をしに来たんだか、ただまったりしに遊びに来たような気分になっていた。そしてそろそろやろうか、と大量のCDとギターが並んだ仕事部屋に移ると、山田さんの表情も穏やかながら引き締まったようで、すこし緊張した。目の前で僕のためにギターを抱え、弾き、そして歌い始めた。なにも大袈裟な言い方ではないのだ、僕にとっては。目の前にいる人は高校生のころから聴いてきたミュージシャンで、その人の自宅で一緒に何かをやろうとしているのだから。今までに感じたことの無い感覚だった。「ここで何か文章読んでみて」の合図でひとつアメリカでの日記のようなものを読む。それからまた山田さんが歌い、また僕が読む。『ドライブ』の最後は英語の歌詞を繰り返して終わりに向かう。その日本語訳を僕が歌に輪唱するように読む......。
 パーティに来てくれた友人知人から最も多く言ってもらえたのが、その『ドライブ』での掛け合いが良かったという感想で、それを聞くと本当に、本当にうれしい。当日僕は色んな準備が整っておらず終始バタバタしてしまったけれど、みんなが美味しいトルバドールのご飯を食べ、乾杯し、おしゃべりをしながら過ごしていた、その様子もうれしかった。そしていつものセットリストとは全く違う'アメリカ的'な曲をこの日のために用意して来てくれた山田さん。カバー曲なども含めはじめてライブで聴く曲がたくさんあったけど、なんといっても自身の曲『光の葡萄』が深く響きわたった。急遽参加してくれたシンガー立花綾香さんのコーラスもとても強くきれいに響いてきた。
 あの夜、なんとなく会場全体がきらきらしていたのは、山田さんがステージ周辺にセッティングしてくれた電飾のおかげだけでは無かった。集まって来てくれた素敵な友人たちに感謝を。僕の夢もひとつ静かに叶ったような、そんな夜だった。
山田さん、どうもありがとうございました。きっとこれがひとつの始まりでもあると信じて。
 付け加えるような挨拶になってしまいましたが、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。お手柔らかに見守っていただけますように。
日付は変わってしまったけど、元旦の夜中に、昨年中に綴れなかった思い出を振り返りながら。穏やかな正月を過ごしています。

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『ドライブ』 2013.12.1 ver.

原曲 : GOMES THE HITMAN

作詩 / 作曲 : 山田稔明
(オリジナルの詩を斜体で、僕の詩を本文と同じフォントで記しました)


こぼれ落ちてゆく風景が 僕の背中をずっと眺めてる
やたら大きな満月が 夜の舗道に影を刻み込む
名も知らぬ川を渡る 水面にはもうひとつの空

マクドナルドで買ったチーズバーガーとポテトはもう冷たい
なんとか逃げ込むような思いでたどり着いた、はじめてのモーテル
はじめての夜のフリーウェイで随分と神経を消耗してしまった
目の前の食べ物は決しておいしくないけれど
目の前の状況は、たぶん僕が求めていたものだった
この夜、やっと自分の旅が始まったような気がした

長いカーブに揺られて 右手には海が大きな波を抱く
開け放った窓から 吹き込んだ風が静かな闇を裂く
指先で燃える煙草 でたらめにめくられた地図

目が覚めて不機嫌な君を またすぐに夢に誘うのは
繰り返す夜のリズム 遠くには街の薄灯り

探していたキャンプ場は見当たらない
そこにあったのは、息を呑むほど大きな岩がひとつになったような風景
土なんてほとんど無いのに、意外と色々な植物が生きている
からからに渇ききった枯れている木もあるが
そこには、そんな枯れている木も無くてはならなかった
軽いクライミングをするような気分で、一番上の岩の端まで登った
どうしようもなく渇いた風景を見渡していると、
もう遠くに見える駐車スペースから、おじさんがひとり歩いて来ているのが見えた
風で飛ばされそうな帽子を手に持ち、その手を大きく振った
手を振り返してくれたおじさんの顔も、きっと笑っていたと思う

滑り込んだドライブイン 植え込みで猫が息をひそめ鳴く
白い息を吐き出して 流れゆく雲に大きな伸びをする
ひとつだけわかる星座 すこしずつ色褪せた空

目が冴えて退屈な僕を この世の果てに連れてゆくような
どこまでも続く轍 僕をそっと追い越した空
忍び寄る夜の終わり いつか見た燃えるような赤

サンフランシスコへ着く前の夜
レンタカーで移動する最後の夜
そこには道だけがあった
海岸通りから一本反れて丘を上がって行く
上がって行くと海が見える
さっきまでずっと横目に見ながら走っていた時とは違う、
もう日が沈んでしまうところで、黒い海が見える
路肩にテントを張り終えると、もう辺りは真っ暗だ
ヘッドライトの灯りも消そう
もうコーヒーは淹れ終えた
その夜に必要なものはすべて揃った
あとはテントの外へ出て、仰向けに寝転がればいいだけだった

青い毛布を蹴飛ばして 肩越しに君は小さな咳をまたひとつ
やがて無口な僕たちも 短い言葉を交互に並べてゆく
浮かび上がる山の形 ほどけてゆく雲の隙間から

滞る車の流れに また僕は飲み込まれてゆく
坂を越え角を曲がり 住み慣れた街に帰る途中
照り返す光のプリズム 夜をそっと追い越した朝

have a good day
have a good night

it's 6 o'clock in the morning
there is a ripple in my heart
and it never fade away

今は朝の6時
心の中にさざ波が打ち寄せて
それは決して消えない
......




Sunday, December 1st, 2013
'MAYBE AMERICANS+' Special Night
Live and Poetry Reading with 山田稔明