COFFEE AND CAMERA

coffee break while raining, at Blue Bottle Coffee.

 今朝は目が覚めた時から雨が降っていた。コーヒーを淹れて、パンをトースターで温めてバナナを食べる。キッチンにはあまり人がいなかったので、割と落ち着いてゆっくり朝ご飯を済ませると、雨音はもう聞こえず外を見上げると青空が見えた。念のためレインジャケットをリュックに入れて今日も歩き出した。ここ二、三日で一気に気温が下がってきて、ここのところはTシャツにトレーナーを着ているのだけど、昼間でも日陰に入るとすこし肌寒い。天気予報では今週は天気が崩れる日が多いようだ。
 歩き回って疲れた午後三時頃、ちょうどまた雨も降りはじめてきたときに、気になっていたコーヒーショップにたどり着いて一息ついた。すこしすると雨は本降りになった。なんとなく足だけじゃなく気持ち的な疲れも感じていたので、雨が止んだらもう今日は宿に帰ろうと思っていた。四十分くらい休憩していただろうか、だんだん明るくなってきて、またスッキリと青空も広がったので席を立とうとした時、隣に座っていた初老の男性が僕のカメラを見て「レンズは何を使っているの?」と声をかけて来た。レンズを差し出しながら「これです、40mmの。これしか持っていないんです」というふうに応えると「私は50mm、ほとんど同じだね。今はこれしか使っていないよ」と言ってバッグから自分のカメラも出して見せてくれた。二人で「It's enough!(これ一本で十分だよね)」と共感し合えたうれしい瞬間だった。ローライの、機種名は忘れたが僕と同じ古いレンジファインダーカメラで、白黒フィルムで撮っている。名前はJames、彼もフォトグラファーだと言っていた。iPhoneの写真フォルダから見せてくれた彼の作品は、近年の(といってもまたこれも詳しい訳ではないんだけど)ロバートフランクの写真のような雰囲気だった。街で見つけた物を部分的に切り取った、繊細な感覚をもっているんだなと感じさせる写真。シンプルできれいだった。彼は興味を持ってフィルムのことや印画紙、どんな写真を撮っているのかなど色々と質問してくれた。僕はフィルムも印画紙や薬品もほとんどフジを使っていると話すと、「フィルムは100?そうか400か、いいね。けど今はもうつくられていないフジの600のフィルムが素晴らしかった」と話してくれた。フジの600なんて知らなかった。(ISO感度の話。) それからzineも見てもらったり、なんとかぎりぎりの英語力で楽しく写真談議ができた。うまく話すことはできないが、こうしてちゃんと聞く耳を持ってくれる人と話をするのは楽しい。彼もまた、ここに行くといいよとおすすめの場所を紙に書いて渡してくれた。人が書いてくれたメモが自分のノートに挟まれていくのは、人との出会いが目に見えるカタチで手元に残っていくようで、好きなことだ。手書きというのもやっぱりいい。一緒に店を出て、会えてよかったと握手をしてまたそれぞれの道へ歩き出す。この出会い、そしてこれがコーヒーショップでの偶然の出来事というのがきもちいい。自然と僕は、まだ宿には向かわずにもうすこし遠回りをして行くことにした。それからすこし歩いた先の路地で、地面に落ちている何かに静かにカメラを向けているJamesの姿を見た。雨上がりの西日が眩しかった。