Music made my day.

 今回の旅に持ってきている音楽は、iPhoneとPCのiTunesに入っているものだけだ。けど車のFMと繋ぐあの道具を持っていないから、車での移動中は基本的にはラジオを聞いている。今いるロサンゼルスのあたりでは大体88.1に合わせる。ジャズとブルースのチャンネルだ。そして聴きたい音楽が思い浮かぶとiPhoneから最大音量で流す。といっても窓を開けて走っているとほとんど聴こえないのだけど。そして長距離を移動しはじめると、気付いたらザアーッと鳴っていたり他のチャンネルに変わっていたりして、その都度つまみをいじって気に入る音楽を探す。けど大抵の場合はアメリカの今の流行歌みたいなものかメキシカンで、そんなときはラジオの電源を切って静かに走る。
 カリフォルニアからアリゾナに入る手前の夕方、息抜きに寄ったガソリンスタンドの売店の中で、トイレから出てくるとGrateful Deadが店内のラジオから流れていた。それだけのことでなんとなく気分が良くなるのだから、音楽ってすごいななんて改めて思う。車に戻ってすぐにそのチャンネルを探しても見つからなかった。グランドキャニオンへ行った次の日の朝には、キャンプ場を出てチャンネルを回しているとBob Dylanの歌声が聞こえた。窓も開けてラジオの音量も上げて荒野を走るのが気持ちいい朝。続けて流れてきたのはThe BandのThe Weightで、なんだなんだ、というような気分で朝一番から盛り上げられる。フリーウェイへ乗る前にガソリンを入れようとガソリンスタンドへ寄ったのはちょうどその曲が終わる頃で、再び東へ走りはじめるとGrateful Dead。ラジオからそんな自分の好きな音楽が続けて流れてくるだけで、本当にそれだけでその朝は「いい朝」だということになり得る。ニューメキシコでタオスからサンタフェへ向かう途中の道は、岩の壁と川の間を下って行く交通量も少ないきもちのいい道で、その時はごきげんな乾いたブルースが流れていた。続けてピアノジャズ、その次にいきなりBob Marleyが流れ、そしてまたブルースに戻った。交通量の多い道に出たあたりで急にそのチャンネルは入らなくなってしまった。
 西へ帰ってくる時はほぼずっとiPhoneに入っている音楽を流し続けていた。ライブ版の方が眠くならないことに気付いた。さらにそれが自分で録音したものだとより一層効果がある。そんなことで、友人のライブなどでこっそり録音していたものを次々に聴いていた。Ettを聴いて郷愁を感じて、ナミさんの歌からにじみ出るものにすこし哀愁も感じたり、ツクモクのグルーヴ感に思い切り乗っかってみたり。途中からはイヤホンをつけて外の音を遮り、たまにトラックを追い抜きながら気付いたら半日で一気にカリフォルニアの手前あたりまで1000キロ近く走り続けていた。僕が行ったのはニューメキシコまでだからそう大したロードトリップではないのだけど、今までに経験のない広くずっとつづく荒野を見てきた今、ヴェンダースの映画を無性に観たい気分だ。そしてアメリカへ来てから一番聴いている曲はRy CooderのBoomer's Storyで、やっぱり今の僕はそのあたりの音楽にどんどん惹かれている。そしてそんなアメリカのルーツミュージック好きの日本のおじさんたちのかっこいいバンドをザッツが見つけた。というかこれもまたピーターバラカンさんのラジオで紹介されていたみたいだが、Lonesome Stringsというバンドで、中村まりさんと一緒に演っているアルバムを買ったようだ。電話口からすこし聴こえてきた音ですぐに僕も好きになった。Lonesome Strings、名前は聞き覚えがあるが初めて音楽を聴いた。電話でベーシストの人は今年亡くなったらしい、と聞いていたが、YouTubeでライブ映像を観ていたらその人は数カ月まえに友人がFBでその訃報を載せていた松永孝義さんだと知る。松永さんへの追悼の意を込めてつくられたアルバムも最近発売されたことを知り、迷わずamazonで買った。きっと今日中に日本の家に届くだろう。また電話口ですこしだけ聴くことができるかな。
 映画"Easy Rider"は未だに観たことがないのだけど、こんな動画を見つけたので。