10/01/2012

Driving to east.




Kaibab National Forest.
Grand Canyon National Park.
"Sandstone Bluffs"
MOTEL. Grants,NM

 今晩もMOTELで穏やかな夜の時間を過ごす。今回の旅で初めてモーテルを経験して、一気に好きになった。アメリカを車で走っていると至る所でこの"MOTEL"を目にする。ホテルほどのサービスやリッチ感は無く、さびれている所はさびれているが、その分安く泊まることができるので旅行者にはやさしい。そして僕は安くて助かるからというだけでなく、単純にモーテルというものが好きになってしまった。外観がまず良いのだ。大きな"MOTEL"の看板、どことなく安っぽい造り、広い駐車場。ほとんどのモーテルはWi-Fiも使える。僕が利用するひとり用の部屋は大体が広い一部屋の中心に大きなベッドがあり、バス、トイレ、イス、テーブル、テレビ、場合によっては冷蔵庫や電子レンジも備わっている。簡単な朝ご飯もロビーでサービスしてくれるところも多い。今日のここは、コーヒーとドーナツがあると言っていた。持参しているフルーツも食べれば十分だ。オレンジとバナナは冷蔵庫に入れておいた。これまでは大体が2,3階建てだったが今日のところは平屋で、今まで以上に田舎っぽくてゆとりがあっていい。カリフォルニアでも何回かモーテルに泊まったが受付の人は機械的に仕事をこなしていた感じで、けど今日のここは夫婦で経営しているのか、生後4か月のかわいい赤ちゃんを抱きながら、チェックインの時もすこし楽しく話ができた。今晩は穏やかに時間が過ぎている。お金を気にする必要が無ければ、毎日ドライブした先で通りがかりのモーテルに泊まってロードトリップを続けていきたい。というのも、安いとは言っても僕はまだ12月まで旅行するので、毎日その出費が重なっていくのはさすがに金銭的に厳しいのだ。今日もここへ来るつもりではなかった。

 3日前にカリフォルニア、ベニスビーチの数日間滞在していた宿を出て、車で東へ走りはじめた。東へ行くとGrand Canyon National ParkのあるArizona州があり、さらに進むとAlbuquerqueやSanta Fe、Taosなどのアメリカインディアンの文化で知られる町があるNew Mexico州に入る。一昨日の夕方、グランドキャニオンの近くにあるKaibab National Forest内のキャンプ場にテントを張った。タダだと思っていたら$10必要だったが、まあ言っても800円だ。翌朝コーヒーを淹れて簡単な朝ご飯を穫っていたらスタッフの人が回って来て、「今晩もここでキャンプしていきたかったらタダでやっていっていいよ」と言ってくれた。僕たち休みだから、とかなんかそんなことを言っていた気がする。続けて、ここからグランドキャニオンまでどのくらいかかるか聞くと、「20分で行けちゃうよ。しかも今日は入園料$25を払わなくていい日なんだよ。今日はだいぶ出費を抑えられるねー」と、そんなラッキーなことがあって二日間キャンプしていた。一日目の夕方にテントを張り終えた後、コーヒーを淹れ、すこし散歩をした。たまに他の利用者の車の音が聞こえる以外には、鳥の鳴き声とどこかから聞こえてくる動物の遠吠えだけで、静かだった。木々の間からはちょうど傾きかけた西日がやわらかく差して来て、ゆったりとした時間の流れをじんわり感じた。豊かだなあ、と素直に感じられる時間だった。そんな時に思ったのは、ここにザッツ(相方相方と書いて来たが、ぼくは相方のことをこう呼んでいる)が一緒にいればどんなに幸せだろうということだった。その後夕飯をつくって食べ始めるときにも同じことを考えた。いつかきっとここへまた来よう、と思った。
僕はそんなにキャンプに慣れていなくて、今回学んだのはちゃんと明るいランタンがあった方が良い、というのと焚き火用の木を事前に集めておいた方が良い、ということ。暗いし寒いしで、夕飯食べ終えたらテントに入り、ノートを書いたりしてたらすぐ寝てしまった。もうすこし夜の時間も楽しみたいところだ。そして朝は凍えて起きた。急いで靴下を履きビーサンから靴に履き替え、ネルシャツにパーカーとダウンベストも着てやっとなんとかなった。日が上るにつれてまたひとつずつ脱ぎ、Tシャツ、ビーサンに戻る。
 そんなことで昨日はグランドキャニオンへ。トレッキングなどするつもりではなかったのでビーサンのまま駐車場から歩いていったが、気持ち良さそうなのでトレッキングロードをすこし下っていった。けどすれ違う人々に足下をチラ見されるのが気になったし、実際に「それで歩いてるの!?」って声をかけてくる人もいて、1時間くらい歩いて引き返した。富士山をサンダルで登っていた欧米人たちの方がよっぽど無茶に思えたが。グランドキャニオンは半日くらい歩けば谷の底まで行けるらしい。そしてその谷底に流れているコロラド川の辺りでキャンプもできるのだと聞いて、翌日バックパックも背負って出直して来ようと思ったが、それに必要な許可証のようなものはすぐに簡単に手に入らないと聞いて諦める。それから車でいくつものView Pointを回って満足した。グランドキャニオン自体は最高だった、と確かに思うが、僕はどうしても観光客がたくさんいると感動がかなり薄れてしまう。学生のころ行ったフランスのモンサンミッシェルもそうだった。そういう意味では、今日偶然行ったニューメキシコ州Acoma近くの"Sandstone Bluffs"という場所は、純粋に感動できる隠れスポットを見つけた気分で心が躍った。今日もキャンプ場を目指して車を走らせていたのだが、なかなかあるはずのエリアで見つからず、ここかな?と入っていった道の先にあったのがSandstone Bluffsだった。大きな岩の大地、崖、その上からの眺め、土なんてほとんど無いのに育っている植物、あったかい西日。しかも途中まで他に誰ひとり居なかった。カメラだけ持って岩を登って行くと上の方では風が吹いていて、帽子が飛ばされそうになった。先っちょの方に恐る恐る歩いていって、座ったり横になったりして、またその辺りをただぶらぶら歩いたりしていた。もう遠くに見える駐車場からひとりおじさんが歩いて来ていて、手を振ったら振り返してくれた。もうその頃にはキャンプ場のことは諦めていて、日が落ちてしまう前にモーテルを見つけることにした。
 このモーテルは居心地が良い。いつのまにか真夜中になってしまってお腹も空いてきた。あしたの朝のドーナツが楽しみだ。

2012.9.30sun midnight wrote.