ONE WEEK


 レンタカーを借りて動き始めるまでの間、サーフボードはハモサビーチのおばさんのお店のバックヤードに置かせてもらっている。昨日は朝おばさんにお店まで乗せてもらい、それからひとつ北のManhattan Beachまでサーフボードを抱えてスケートして行った。その行為自体が、一度やってみたいと思っていたことだったのだ。セミロングと言ったらいいのかファンボードと言っていいのか、ショートとロングの間くらいの大きめの板なので持ちにくいし、結構腕が疲れる。日差しの強いかんかん照りの一日でなんとか海パンだけでやれたが、友人から聞いていたようにこっちの海は水温が低く、しばらくするとだんだん寒くなって来て、そしたら砂浜に上がって昼寝、そして暑くなって来たら波乗り再開。と、そんなことを6時間ほど繰り返していた。
 夕方にはハモサに戻り、常連になりつつあるカフェレストラン、Scotty's on the strandで軽食とコーヒーを注文する。昼間は砂浜から動くのがなんとなく面倒で、ご飯をまだ食べていなかった。Happy Hour Menuがあって、その中からShrimp Baja Rollsというのを選んだ。軽食といってもやっぱりボリュームがあってすこし満腹になる。夜は友人とご飯を食べる約束をしているのに。Scotty'sは海岸にずっとつづくウォーキングロード沿いにあり、窓辺の席に座ってそこを通って行く人々を眺めるのが最近のお気に入りだ。きれいで開放感のあるレストラン風の部屋と、もうすこし小さくそれぞれがゆっくりできるような喫茶店風の部屋とに分かれていて、もちろん後者を選ぶ。昨日はちょうど夕暮れ時だったので、すぐ外を通り過ぎて行く人や砂浜で遊ぶ人、Pierの上できっと同じように夕焼けを眺めている人越しに、日が海に落ちて行くのを眺めていた。
噂には聞いていたが、本当にこっちは何度も何度もコーヒーのおかわりを注ぎに来る。マグカップでサーブされるので始めから量が多いのにそんなには何杯も飲めないのだが、彼ら、彼女らにとってはそれが良いサービスだという考えなのだろう。最初は、コーヒーが残り少なくなったら、とか、目が合うと注ぎに来てくれるのかと思ったが全くそれは違った。彼女らは僕がどのくらい飲んだかなんて気にしていなくて、きっと、なんとなく手が空いた時やフとした時にコーヒーを注ぎに回る。ニコッと微笑みながら「おかわりどう?」とコーヒーサーバーを持って近付いてくるのだ。前回はまだ8分目くらいまで入っているのに注ぎに来て驚いたが、昨日は9分目どころかまだふた啜りくらい飲んだだけで、すかさず来た。断る時は断るしもう要らないと伝えるが、そこまですぐに来られると注がれたところで大して変わらないので、好きなように注がせてあげる。こんな言い方をしたくなるほど、彼女たちはおかわりを"注ぎたがっている"のだ。そんなことを繰り返すが実は僕もそれをすこし楽しんでいるし、ここは居心地が良い。店を出てすぐに席の足下にスケボーを忘れて来たことに気付いて取りに戻る。実ははじめて来た時も同じことをしてしまって、しかもその時と同じ店員のお兄さんとちょうど目が合い、「いつも忘れるねー」と言って笑われる。憶えてくれていてうれしかった。
 高校以来会っていない友人がすこし南のロングビーチという町に住んでいることが分かり、連絡を取って夕飯を一緒に食べに出掛けた。彼とは小,中学生のころ地元のサッカーの選抜チーム(といっても大したものではない)で一緒で、高校時代はたまに対戦相手だった、という程度の友人だ。そんなに遊んだことも無かったが、せっかく近くに居るならという感じでそんな話になったのだった。彼はマサヤという名前だが、僕にはちょうど同じような関係で同じ名前の友人がもう一人居る。車を持っている彼にハモサビーチでピックアップしてもらったのだが、なんとそこに現れたのは僕が思っていた方と違う、もう一人のマサヤだったのだ。たしかに直前の電話で久しぶりに聞いた彼の声はイメージと違ったが、それなりに時が経っているしまさかそんなことは予想しなかった。さすがに驚いたが、どちらのマサヤとも同じような付き合いだったので、すこし頭を切り替えればいいだけのことだった。久しぶりでさらに人を間違えていたにも関わらず、会ってみれば自然にいろんな話ができ、タイ料理を食べながら楽しい時間を過ごし、次はどこどこに食べに行こうと言って別れた。自分の勘違いが生んだ勝手なサプライズだったが、昨晩寝る前に気付いたのは、もう一人の方はマサシだということ。
 今日はおばさんといとこのモニカ、あと遊びに来ているモニカの友人とブランチを食べに行ったりすこし出掛けていた。きのう日を浴び過ぎたのだろう、身体が火照っていてすこし疲れている。
いきなりレンタカーで初のアメリカドライブは怖いだろうからと、おばさんが火曜日に2時間の自動車教習を予約してくれた。なので水曜日からレンタカーをかりて動き始める予定で、ついに自分の旅がはじまる感じ。日本を出てまだ一週間なんだなと昨日フと思った。その前夜祭のような気分で土曜日の夜に思い切り楽しんだ、名古屋の友人がやっているツクモクというバンドの東京でのライブも、ずいぶん前のことのように感じる。その土曜日の昼に、相方と小鳥屋さんへ見に行って出会ったインコが、ついに家へやってきたようだ。帰る楽しみもひとつ増えた。

2012.9.16sun evening wrote.